第107話・奴の名は〝ケン〟



難解なミステリィ、それはまさしく内容を理解するのが
極めて困難な小説だった。
殺人事件の容疑者は3人。
売れっ子コピーライターの望月賢二。
新宿2丁目のバーテンダー・蒲郡健。
証券会社の営業係長・柴田憲太郎。

さらに登場する刑事の名前が、森山謙太。

名前に〝ケン〟と付く主要人物が4人も登場するのだ。

しかも、周囲の関係者たちは、それぞれに対し、
「ケンちゃん」だの、
「ケン坊」だの、
「ケンの字」だの、
「ケンさん」だの、
「ケン(呼び捨て)」だの、
好き勝手な呼称を用いる。

誰が誰のことやら、読んでいてさっぱりわからない。

どうやら、それが作者の狙いだったようだ。

読者を混乱させ、あのケンだと思ったら、このケンだった、と
ある意味、究極の叙述トリックとしての仕掛になっていた。

結局、解決部分を読み終えても、真犯人が誰だったのか、
判然としない。

この原稿を作者から受け取った編集者・入江もしかり。

「先生、とどのつまり、誰が犯人なんですか?」
「読んでわからんかね、入江君?」
「わかりませんよ」
「君も読解力が足りないなあ。決まっているじゃないか。
 犯人はケンちゃんだよ」

入江の左フックが、上清水の顔面に炸裂した。


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<CM>第9回一言ボケ選手権開催中!

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by osarudon1 | 2004-09-09 15:18