第146話・2ちゃん文学

「入江くん、最近、『電車男』ってのが話題になってるんだって?」

「話題になったのはずいぶん前ですが、ドラマ化の放送も始まりましたし、また注目されてはいますけどね」

「そういうのが売れるのなら、私にもいくつかアイデアがあるのだがね」

「一応、聞いておきましょう」

「タイトルはズバリ、『戦車男』。おつむの弱い男が戦車に乗って暴れまくるという話だ」

「それ、ハナ肇が主演した映画『馬鹿が戦車(タンク)でやってくる』じゃないですか」

「ああ、そうか。いや自分でもどこかにあったようなストーリーだなとは思っていたんだがね」

「有名な映画ですよ。『いいかげん馬鹿』『馬鹿まるだし』と共に、馬鹿三部作として人気があったんです」

「馬鹿三部作って、すごい響きだなあ」

「というわけで『戦車男』はボツですね」

「残念。しかし、まだ他にも考えてあるんだ」

「一応、聞いておきましょう」

「タイトルはズバリ、『馬車男』。これは私としては新境地ともいえるファンタジーでね。さまざまな職業の仲間たちやモンスターと一緒に馬車で旅をしながら世界を救う、という話だ」

「それ、『ドラゴンクエストモンスターズ キャラバンハート』ですね」

「そうか、どこかにあったような設定だとは思ったんだがね」

「先生、最後までプレーしたんですか?」

「失敬な。この上清水、ゲームを途中で投げ出すようなマネはしない!」

「感動的なまでに説得力ありません」

「まあ、いくつかは途中のヤツもあるがね。あくまで途中だ。投げ出したわけではない」

「というわけで『馬車男』もボツですね」

「残念。いやだがしかし、もう一つネタを用意してあるのだ。汲めども尽きぬアイデアの泉。私は自分の才能が恐ろしい」

「一応、聞いておきましょう」

「タイトルはズバリ、『火車男』。カード社会の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生を描くという社会派ミステリィになる予定だ」

「先生、宮部みゆきさんの作品って、お読みになりますか?」

「当然だ。全部読破しているよ」

「じゃあ『火車』も?」

「もちろん……あっ」

「あっ、じゃないでしょう」

「どこかで読んだ話だと思ったら、それだったか!」

「盗作騒ぎにならないうちに、あきらめたほうがいいですね」

「ううむ。しかたがない。こうなったら最後の切り札だ」

「一応、聞いておきましょう」

「もてないヲタク青年が電車の中で出会った女性に恋をして……」

「タイトルは言わなくていいです。っていうか先生、しっかり読んでるじゃないですか」

「何のことやら」

「僕が代わりに新作を考えてあげましょう。タイトルは『中古車男』です」

「ほほう。どんな話だい?」

「あんたの自伝だ!」

入江くんのギガスラッシュが上清水先生の体を遠くロンダルキアの大地まで吹き飛ばした。

END
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by osarudon1 | 2005-07-14 18:15