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第155話・入江君異動

ミステリィ書籍の編集者として、独自のポジションを築きつつあった入江君だが、
メーン担当作家である上清水先生があんなことになってしまったこともあり、
前々から上司に打診を受けていた人事異動の話を承諾することを決意した。

入江君の新たなる活躍の場は、ラノベ系の編集部。

過去の実績を買われ、社が命運を賭けてデビューさせようとしている、
新人作家・鈴蘭乱々を担当させてもらえることになったのだった。

「鈴蘭先生、よろしくお願いします」

「あ、いえ、先生だなんてとんでもない。まだデビューもしていないヒヨッコですし」

「この業界では作家の方を先生と呼ぶのが通例なのです。たとえば、
 上清水先生だって、『先生』の部分に尊敬の念を込めて呼んでいた人なんて
 いませんから。まあ、鈴蘭ちゃん、っていうのと同じようなもんだと思ってください」

「わかりました」

「で、鈴蘭ちゃん、デビュー作の件なんだけどさぁ」

「先生はどうした!」

「気にすんな、ヒヨッコ。一応、原稿読ませてもらったんだけど」

「……どうでした?」

「おもしろい! 特に主人公の同居人であるM2号の設定がサイコー!」

「あの設定は自分でも自信があったんですよ」

「容姿端麗な中学生でありながら、敏腕弁護士。しかも、22世紀から
 タイムスリップしてきた縄文人。もう、わけわかんない」

「キャラ立ってるでしょ?」

「立ちっぱなしで、足が棒のようになってる!ああ、座りてぇ」

「をい」

「そんで、小説のタイトルもいいね。インパクト抜群」

「それは三日三晩考えて付けたタイトルですからね」

「鈴蘭乱々、衝撃のデビュー作。『おもらし入道』!」

「問題はカバーや挿絵を担当するイラストレーターさんの人選ですよね」

「わかってるね、乱々」

「ついに呼び捨てかよ」

「ラノベの売れ行きを左右するのはイラストといっても過言じゃないからね」

「やっぱり萌え系キャラをうまく描ける人にお願いしたいですよね」

「大丈夫。もう手配してある。っていうか、表紙イラスト完成済み」

「え?そうなんですか。見せてくださいよぅ」

「へっへっへ、ちゃんと持って来ましたよ。これだ!100万部突破確実の、
 キャッチーなイラストですぜ、ねえさん」

「誰がねえさんだ。えー、どれどれ……うぐっ」

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「主人公をビジュアル化してもらったんだよ。ブッ飛んでるだろ?」

「お前がブッ飛べ!」

乱々のスーパートルネードスローが入江君に炸裂した。
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by osarudon1 | 2005-08-26 15:25