第164話・回想する上清水一三六(再録シリーズ・5)




あれは、5年ほど前でしたか。
私、子供向けの絵本を出版したことがあるんですよ。
あまり売れなかったこともあって、今では絶版ですが。
タイトルですか? 『12匹のおさるどん』です。
動物園にいる12匹の猿が主人公の物語でしてね。
まあ、子供向けなのでミステリィ色は薄いんですが、
私なりの仕掛けは考えましたよ。

最初は飛び出す絵本、というアイデアでした。
でも、それじゃあ普通すぎて私らしさがない。
それで、絵が飛び出す代わりに、12体の猿の
フィギュアを付録につけたんです。
子供たちには、読むときに自分でそのフィギュアを
ページ上に配置して、人形ごっこをするような
感覚で物語を楽しんでもらおうと思いましてね。

猿のフィギュアも海洋堂に製作依頼して、かなり
いいものが出来たと思いますよ。

でも、一つだけ予想できなかったことがありましたねぇ。

幼稚園児ぐらいのお子さんって、作者の意図通りに
遊んでくれないんですよ。
なまじフィギュアが出来が良かったものだから、
絵本など読まずに、そのフィギュアだけで遊んでしまうんです。

だから、この本は古書店などで見かけると、
全部フィギュア無しの不完全本ですよ。
小さな子供は人形なんて、すぐに無くしてしまったり、
壊してしまったりするものですからね。

そんなわけで、古書店にある『12匹のおさるどん』は、
ページを開いても猿がいない空のオリの絵ばかりなんです。

猿たちはどこへ行ってしまったんでしょうねぇ?
本は処分しても、フィギュアだけは大事にとっておいて
くれたりすると、嬉しいんですけどね。
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by osarudon1 | 2005-09-09 17:33