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第190話・行列のできる探偵事務所

その雑居ビルの3階にある探偵事務所の前には、
数日前から長蛇の列が出来ていた。
それは行列というよりも、群衆という言葉がふさわしいほどだ。
事務所のドアの前から、廊下、階段、ビルのエントランスホール、
そして外の舗道まで、人が群がっているのだ。

一番前、つまり事務所ドアの前にいる数人は、
ドアを乱暴に叩きながら、怒声を張り上げていた。

「コラァ、この糞探偵があーっ!中に居るのはわかってんだ、おい!
 居留守使ったって、こちとら引き下がったりしねえぞ、この野郎!」

探偵事務所に詰め掛けた債権者たちは、皆、一様に殺気立っている。

「借りたもんは返すってのが、人間としてのルールだろうが!
 いいかげん、腹くくって出て来いや、おんどりゃあ!糞ボケがぁ!」

債権者たちの読みどおり、探偵は留守ではなく事務所内にいた。

しかし、彼は天井からぶら下がってユラユラと揺れているだけで、
ドアを開けて出て行くことは、どうやら永久になさそうだった。
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by osarudon1 | 2005-11-15 22:34