『激短事件』



この事件は、大切なものの数々が、
知らぬ間に消失・紛失しているというものだった。

感動する心。
疑うことを知らない純真さ。
大きな夢。
希望。
正義。
澱みのない笑顔。
チャレンジ精神。

そういう諸々のものが無くなっている。

誰かが盗んだのか?
どこかへ置き忘れたのか?
壊れてしまったのか?
腐ってしまったのか?
それとも最初から持っていなかったのか?

そんな消失事件に、胸を痛め、
悩み苦しむ人は、数多いだろう。

でも、大丈夫。
それらは、どこへも失せてなどいない。
大丈夫。

我が子の屈託のない笑顔をのぞき込む。

澄んだ瞳。

そこに、自分が無くしたと思っていたものが、
すべて存在していることに気付く。

失ってしまったのではない。

すべて、継承され、そこにあるのだ。

我が子の成長を見守るということは、
自分から継承されたものの成長を、展開を、活躍を、
そして思いもしない素晴らしい変容を、
ずっと見守っていくということでもある。

そう、すべて、ある。
そこに、あるのだ。


激短ミステリィ・完結
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by osarudon1 | 2005-11-22 13:41