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第9話・青ひげの想い出

彼は、クローゼットや机の引き出しから様々な品を取り出しては、
ひとつひとつ手にとって想い出にふける。
これは最初の妻が大事にしていた首飾り。
これは2番目の妻のお気に入りのティーカップ。
これは3番目の妻の誕生日に贈ったコサージュ。
これは4番目の……、いやもうやめておこう。
この部屋は想い出の品であふれすぎている。
どんどん増え続けて、もう置き場所もないほどだ。

……そろそろ潮時なのかもしれない。
想い出の品を処分してしまっても、
想い出そのものが消えてしまうわけではない。
ただ思い出すことが少なくなるだけだ。

彼の特殊な趣味は、数十年に渡って続いてきたが、
もはや大事な大事な品々を、いつまでもしまっておくには
この家は小さすぎる。
かつて愛した女性たちを忍ばせる小物の数々は、
いざとなればゴミとして捨ててしまえばいい。
しかしそれよりももっとやっかいなのは、
決してゴミに出せない物だった。
新たにそんな物を埋めておくほど、
もう床下にはスペースが無くなっていたのだ。
だからといって、事情が事情だけに、
より広い家を求めて引っ越すわけにもいかず、
彼は新しい妻を娶ることを断念したのだった。
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by osarudon1 | 2004-05-17 18:09