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第11話・年金未納殺人事件

書き下ろし推理小説の打ち合わせで、
担当編集者が提案してきたのは「新社会派ミステリィ」だった。
今さら社会派というのも、いかがなものかと思うが……という、
こちらの疑問を、編集者は熱意のこもった説明で解消してくれた。
確かに、本格ミステリィは根強い人気があるが、
政治や経済、国際問題といった要素も、ここ数年は国民の関心が
急速に高まっている。
もしかすると、伸び悩み気味だった拙作の部数も、この作品で
大きく巻き返すかもしれない。

今書くなら、当然、題材は年金問題だろう。
タイトルはズバリ、『年金未納殺人事件』。
永田町を舞台にした、政治家たちの野心と陰謀、そして失脚。
年金問題にからむ謎の連続殺人事件。
ううむ、なかなかいい感じだぞ。
党内に潜む正体不明の裏切り者。
果たして国会会期中に事件は解決するのか?
ラストのどんでん返しは、これで決まりだ。
〝未納ではなく、未加入だった〟
いける。いけるぞ。俺の代表作になること間違いなしだ。

そして俺の思惑通り、『年金未納殺人事件』は
出版と同時に大反響を呼び、またたく間に100万部突破の
ベストセラーとなった。

「……次のニュースです。小説『年金未納殺人事件』などで知られる
人気作家の大泉鈍一郎氏に、過去9年間に及ぶ国民年金未納期間が
あった事実が発覚いたしました……」
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by osarudon1 | 2004-05-19 12:06