第12話・ファン心理

ミステリィ作家・上清水一三六氏の
新作長編『哀しみのソンブレロ』が出版された。
約3年ぶりの書き下ろし長編ということで、デビュー作から
全て読破している私としては、盆と正月が一緒に来たような
幸福感に包まれていた。
上清水氏の作品は、本の仕様そのものに仕掛けを施した、
アッと驚くトリックが多い。
例えば、偶数ページだけ読み進めると全く違う話になったり、
同じ本でも10冊に1冊の割合で、登場人物の名前だけ全て
異なるものが混じっていたり、と凝りに凝っている。
中には、物語のエピローグが帯の裏側に印刷されていた、
なんてのもあったほどだ。
今回の『哀しみのソンブレロ』も、そういった意味では、
かなり画期的な仕掛けが用意されている。
十数人にも及ぶ主要な登場人物が、それぞれの視点で
事件を語る章立てになっており、各章はキッチリと
1ページずつの細分された構成なのだ。
ザッピング感覚とでもいうのだろうか。
そして驚くべきはページ番号。
これが、順番通りではなく、20ページの次は136ページ、
というように、ランダムに並べられている。
それだけではない。
同じページが2度登場したり、逆に全く存在しないページすらある。
最終ページはエピローグならぬ、プロローグ。
もちろん、ページ番号は「1」である。
上清水作品の中でも、ダントツの凝った仕掛といえよう。

ちなみに、書店に数冊平積みになっている「哀しみのソンブレロ」を
調べてみると、私が買った本以外は、どれも1ページから順番通りに
製本されたものだった。
おそらく、過去に例があったように、10冊に1冊くらいの割合で、
このザッピングバージョンが用意されているのであろう。
ファンは迷わず、両バージョンをゲットせよ。
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by osarudon1 | 2004-05-20 12:40