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第14話・激長ミステリィ

世界最長の本格ミステリィを書く――。
それが、作家・張退作の夢であった。
二階堂黎人氏の「人狼城の恐怖」をはるかに超える、
空前絶後の大長編。
ついに彼の夢が叶う時が来た。
張退作の名は、この作品の刊行によって、
必ずやミステリィ文学史上に残るはずである。

タイトルは「ファイナル・トラジディ」。
完結までに全200巻を要するという、
「グイン・サーガ」も真っ青なボリュームだ。
溝淡社ノベルスから毎月2冊ずつの刊行で、
1冊あたりのページ数も1000ページ。
超人的な速度で執筆する能力を持つ、張退作でなければ
不可能な芸当だ。

第1巻刊行前にWEB上で公開された著者インタビューによれば、
プロローグだけでも2冊に及ぶ、とのこと。
ケタ外れのミステリィ登場に注目が集まる中、
ついにその第1巻と第2巻が店頭に並ぶ日がやってきた。

しかし……。
合計2000ページにわたるプロローグとは、
いったいどんなものなのか、と期待した読者は、
とんでもない肩透かしをくらわされることになったのだ。

なんと、第1巻の内容は、
1万人を超える登場人物表だった。
第2巻は、事件の舞台となる1000階建て高層ビルの
各フロア見取り図だった。
どうやらプロローグは3巻、4巻になるらしい。

こうなると、最終巻とその数冊前は、エピローグどころか
「あとがき編」「参考文献編」、下手をすれば、
「奥付編」なんてことになりかねないことは、
読者の誰でも容易に予想がつく。

当然のごとく、第1、2巻は返本の山と化し、
第3巻以降が発売されることはなかった。
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by osarudon1 | 2004-05-22 09:36