第26話・箴言

名探偵Xは、今ひとつ自分がメジャーな存在ではないことに
悩んでいた。
数々の難事件を解決し、警察関係者からの信頼も厚い。
それなのに、世間的にあまり認知されていないのだ。
なぜだろう? 何か自分に欠けているものがあるのか?
熟考の末、たどり着いた結論は、
「決めゼリフ」が無い、ということだった。

「じっちゃんの名にかけて」
「お前らのやったことは全部お見通しだ」
「ヒトラーもスターリンも信用できん」

など、メジャーな名探偵たちには、
毎回必ず口から飛び出すフレーズがある。
それが認知度アップにもつながっているに違いない。

そういえば、名探偵に限らず、
お笑いタレントでも、アニメのヒーローでも、
人気者は必ず独自の決めゼリフを持っているではないか。
中には流行語大賞の栄誉に輝いたケースもある。

名探偵Xは考えに考えた。
しかし、なかなかいいフレーズが浮かばない。
「おいらの推理はバッチリぴょーん」
「犯人さん、コクっちゃえ!」
「天国の乱歩さん、見てますかぁ」

全部、ダメダメである。

しかし、こういうものは、ある時突然、
天から降ってくることがある。
名探偵Xの脳裏にも、
1つの決定的なフレーズが降臨した。

数日後、ある殺人事件の関係者が
一堂に集められた。
いよいよ、決めゼリフの御披露目だ。
名探偵Xは、小さく息を吸い込んで、
自信満々にフレーズを口にした。
「みなさん、@×<■〒♪㊦!」
その場にいた人々は、一瞬凍りついた。
そして顔を真っ赤にして怒り出す者や、
名探偵Xを罵倒する者が続出。
彼の決めゼリフは、良識ある人々の
神経を逆撫でするものだった。
もちろん、テレビなどで放送できるわけもなく、
活字にすることすら憚られる。

こうして、名探偵Xのメジャー化計画は頓挫した。
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by osarudon1 | 2004-06-08 20:14