第47話・張井呆太と炎のタブレット



魔法探偵・張井呆太。
魔法によって起こされた事件を、
魔法で解決する男。
しかし、本人の魔力は極めて微少なもので、
実際にはほとんど事件を解決したことなどない。
だから、人々は彼をこう呼んだ。
〝阿呆探偵〟と。

その張井が今回直面した事件は、
氷で閉ざされた密室を開くことだった。
魔法世界の常識として、
氷に対抗できるのは〝炎〟だ。
「火炎放射」や、「大文字」、「オーバーヒート」など、
炎系の魔法が使えれば何の問題もないのだが、
阿呆探偵にそんな能力はない。

そこで、魔力を一時的に引き出す薬の力を借りることにした。
張井が怪しげな商店街の怪しげな店で買ってきた、
怪しげなタブレット。
袋の表には「炎のタブレット」と書いてあった。
炎系の魔法が使えるようになる薬は、
たいていリザードの尻尾や、サラマンダーの血などが
原料となっている。
(これを飲めば、俺でも火噴きができそうだぞ)
張井は、事件解決を確信した。

ただし、解決を確信していたのは本人のみで、
他の誰もが張井が失敗することを容易に予想できていた。

巨大な氷塊を前にして、
張井はタブレットを1粒口に放り込んだ。
「ガアーッ!」
口から火が出るような辛さだ。
しかし、辛いだけで実際に火は出ない。
張井が見落とした「炎のタブレット」の袋裏には、
原料・ハバネロとだけ書いてあった。
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by osarudon1 | 2004-06-30 12:58