第54話・取調室2



「犯人は、おまえだ!」
「そうですよ。さっきから私が殺したって言ってるじゃないですか」
「とぼけても無駄だ。証拠は全部揃ってるんだ!」
「わかってますよ。だから観念して自首したんですよ」
「そうやって、いつまでも罪を認めないつもりか! この悪党め!」
「いや、悪党なんですけど、罪は認めてますってば」
「警察をナメるなよ!」
「ナメてませんって。ナメてない。全然、これっぽっちもナメてない」
「さあ、白状しろ! おまえがやったんだろ!」
「私がやったんですよ。白状してますよ。ゲロしてますよ」
「ううぬ、しぶといやつめ」
「しぶとくないですよ。半落ちどころか全落ちですよ」
「カツ丼食うか?」
「30分前に食べたばかりですよ。まだ腹いっぱいですよ」
「こっちがソフトに出れば調子に乗りやがって、この野郎!」
「ソフトも何も、カツ丼飽きました。3日連続ですから」
「しかたがない、今日はこのくらいにしておいてやる。続きは明日だ」
「いいかげんにしてくださいよ。自白してるんですから」
「俺も刑事生活30年だが、こんなに腐った野郎は初めてだぜ」
「こんなに素直に自白する犯人のほうが珍しいでしょうが」

~翌日~

「いやあ、君。すまなかった」
「どうしたんですか、刑事さん?」
「君、釈放だ。無実だった」
「ええっ? だって、私が犯人なんですよ!」
「真犯人がさっき、出頭してきてたんだ」
「はあ?」
「状況からして、そいつがやったことは間違いない」
「はあ?」
「君は、いわゆる誤認逮捕というやつだった。警察にも
 間違いはある、ってことで許してもらえんだろうか?」
「許すも、何も、誤認じゃなくって……」
「カツ丼食うか?」
「いや、それはけっこうですけど」


こうして、私は訳がわからないままに、自由の身になった。
いったい、何がどうなっているのかは、全くわからない。
ただ、昔から私の言うことには誰もまともに耳を貸してくれなかった。
私の言葉は、誰にも伝わらない。
今回もそういうことだったのか?
ならば、私の代わりに逮捕された真犯人とやらは何者なのだろう?

私とは正反対で、どんなに根拠薄弱でも、口からでまかせばかりでも、
妙に人の心をとらえ、信用させてしまう人間がいる。
そういう奴だったのか?

私の代わりに捕まって、どんなメリットがあるのだろう?
カツ丼の味は、期待するだけ無駄だよ。
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by osarudon1 | 2004-07-07 20:15