第59話・上清水一三六の新たなる野望



本格ミステリィ小説の構造とは、
突き詰めていえば、
1・謎の提示
2・論理的解決
この2つである。
1の「謎の提示」に関しては、作家・上清水一三六は、
絶対的な自信を持っていた。
次から次へと、汲めども尽きぬ泉のごとく、
アイディアが湧いて出てくるのだった。

「絶海の孤島と、嵐の山荘。この2か所で同時に殺人が
 起こる。しかし、この2つの事件は同一犯人の仕業だった。
 距離にして500キロは離れた現場で、どちらも外界と
 隔絶されているという状況。犯人はいったい、どんな
 トリックを使ったのか?!」

「正式メンバーになると、必ず非業の死を遂げるという、
 呪われたロックバンド。これまでにも10人を超える
 歴代メンバーが死んでいる。しかし、現在のメンバーに
 なって早1年。死亡事件はストップしている。なぜ、
 現メンバーは死なずに済んでいるのか?!」

「とあるマンションの1室。他の部屋は無事なのに、
 なぜかその部屋の中だけ震度6の地震に襲われたような
 状態になっていた。果たして何が起こったのか?!」

などなど、ちょっと考えただけでも謎はスラスラと
頭に浮かんでくる。

だが、問題は、2・論理的解決だった。
これが最近の上清水一三六には決定的に欠けている。
広げた風呂敷を、たたむことができないのだ。
オチつかず、というわけである。

そこで上清水はこの問題を解決すべく、斬新な計画を
練り始めた。
オチを、他人に書いてもらう、という手法。

上清水がターゲットにしたのは、エキサイトブログで
毎週末に開催されている「トラバでボケましょう」という企画。
お題として、自分が考えた謎を提示し、
オチをトラックバックで募集する。
自分が書いた謎の提示部分と、結末部分にあたる最優秀応募作。
これを合体させればミステリィ小説が1編出来上がる。
むろん、出版のあかつきには応募者にも印税の半分を
支払う必要が出てくるが、それでも作品が書けないよりマシだ。

作家と読者のコラボレーションによる、画期的な小説。
斬新な仕掛けで勝負する上清水一三六ならではの企画ではないか。

上清水は、オチのつかないアイディアの中から、
ベストのものを選りすぐって、お題として用意していた。






だが、彼の計画が遂行されることはなかった。
お題を出せるのは前回の優勝者のみ。
上清水は一度もチャンプの座に就くことができなかったのである。
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by osarudon1 | 2004-07-13 18:44