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第60話・袋小路に消えた男



2人の警備員は、黒づくめの男を追っていた。
遊園地の売店を襲撃し、現金を奪って逃げた男。
エマージェンシーコールを受け、
すぐさま飛び出した警備員。
犯人の男は、遊園地の人気アトラクションである
「巨大立体迷路」へと逃げ込んだ。

「しめた、これで奴は袋のネズミだ!」
「迷路を抜けられたらどうするんだ?」
「大丈夫。奴が向かった先は行き止まり。迷路のマップは
 俺の頭の中に入っているから間違いない」
「ならば、奴はこの先で立ち往生というわけか」
「その通り。そこの角を曲がれば、うろたえた奴の姿が…」
「……誰もいないぞ」
「いや、奴は確かにこの道を進んだはずだ」
「迷路の途中で、わき道に逸れたのか?」
「それは不可能だ。このルートは一本道。しかも、周囲の
 壁は高さ3メートル。地面に接している壁だから、下を
 くぐりぬけることもできないはずだ」
「それじゃあ、奴は煙のように消えたってわけか?」
「バネの付いたジャンプシューズで、壁を乗り越えたとか」
「ドクター中松じゃないんだから」
「日差しがかなり強いから、蒸発してしまったか」
「しない。少なくとも、服は残っているはずだ」
「秘密のドアとか、抜け穴はないぞ」
「それは見ればわかる」
「姿は見えているが認識できないとか」
「関口巽か、我々は」
「保護色となって壁の色に同化しているというのは?」
「壁、真っ白じゃないか。あの全身黒づくめなら、同化どころか
 コントラストがはっきりしすぎるって」
「黒づくめか……、まてよ。ここに今いるのは、我々2人だな?」
「そうだが?」
「足元を見ろ。影が3人ぶんあるぞ」
「おお! 気が付かなかった」
「その真ん中の、ちょっと立体感のある影、お前、踏んでみろ」
「よし、わかった」

警備員の1人が、力まかせに1つの影の腹のあたりを踏みつけた。

「ぐえっ」という声がした。
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by osarudon1 | 2004-07-14 19:00