第61話・張井呆太と過密の部屋



魔法探偵・張井は、事件の関係者全員を、
殺人の現場でもあるマンションの一室に集めた。
「さてみなさん。今回の事件は非常に難しいものでした。
 犯人の巧みな策略が、真相を見えにくくしていたのです。
 しかし、私の魔法によって、ついに犯人がわかりました」
室内がどよめいた。
「どんな魔法を使ったのかは、業務上の秘密ですが、
 私以外には使えない、高度な魔法だとだけ申し上げましょう」
そんな話、誰も信じていない。
「それでは、今から容疑者の方を1人ずつ、消去法で消していく
 ことにします。最後に残った人物が、すなわち犯人ということ
 です」
緊張が走った。
「まず、被害者の甥である、山田竜吾さん。アナタからだ」
張井は、ソファにふんぞり返っていた若者を指差した。
「殺害状況からして、犯人はかなりの腕力がある人物と
 思われます。しかしアナタは1週間前に両腕を複雑骨折して
 現在も治っていない。犯行は不可能です。したがって、
 アナタは犯人ではありません」
山田竜吾は、安堵の表情を見せた。
「次に、被害者の会社の取引先専務である、利根一喜さん。
 現場に残されていた犯人の毛髪から、血液型がAB型で
 あることが判明しております。アナタは調査の結果、O型
 でしたので、容疑からは外れました」
利根一喜は、安堵の表情を見せた。
「次に、被害者の内縁の妻である……」
という具合に、ひとりひとり消去していく張井呆太。
しかし、すでに3時間は経過していると思われるのに、
一向に真犯人指名にたどり着かない。
「というわけで、アナタは容疑から外れます。ええと、
 これでやっと25人終わりましたね。まだ4分の1か」
広い部屋とはいえ、100人が一堂に会した状態は、
まさに過密の極致。
すでに多くの関係者が、高いびきをかいて眠っていた。
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by osarudon1 | 2004-07-15 20:26