「ほっ」と。キャンペーン

第63話・ギャランティ

第7回トラバでボケましょう!不参加作品

朝の通勤電車。
トンネル内で電車が止まる。
いつまでたってもアナウンスはない。車掌も説明に来ない。

このあとの展開は !?

**************

その車両内にいるのは、私・名探偵Xと、
最近メキメキと頭角を現してきた魔法探偵・張井呆太。
その2人だけだった。
もしかしたら、他の車両には誰も乗っておらず、
車掌もいなければ、運転席も無人なのかもしれない。

「張井君。探偵の存在意義とは、いったい何だろうか?」
「意義ですか……、さあ、深く考えたこともありません。僕にとっては、
 選択肢の1つであった職業に過ぎませんから」
「なるほど、職業か。そう割り切るのも賢い考え方かもしれないな」
「Xさんは、どうなんですか?」
「うむ。私は、まだ心の中にモヤモヤとしたものが残っている。
 推理をし、犯人を暴き、事件を解決に導く。その行為が、
 単なる流れ作業のような気がしてな」
「それこそ、職業だってことじゃないですか。作業をただこなして
 いくことは、他の職業と何ら変わりがないと思いますよ」
「だとしたら、1つ大きな問題がある」
「なんですか?」
「君、探偵の仕事でひと月にどれくらいの収入を得ている?」
「えっ……」
「職業ならば、報酬は最も肝心な要素ではあるまいか?」
「確かにそうですね。しかし、僕は……」
「名前を挙げれば、誰でも知っているような名探偵のお歴々も、
 どのくらいの報酬をもらっているのか、いや、報酬をもらってさえ
 いるのかいないのかも、明らかではないケースが多い」
「おっしゃる通りです」
「だとしたら、それはもはや職業とは言い難いのでは?」
「職業でないのなら、探偵という肩書きの意味が……」
「榎木津なら、『神だ!』とか言うのだろうが、私には、
 そんな尊大な発言をする勇気がない」
「探偵とは……」
「探偵とは……何だろう?」
「それにしても、なぜこの電車は動かないのでしょうか?」
「そりゃ、君。ステージ上に作られた舞台セットの電車だからだよ」

舞台は暗転し、幕が下りる。

年に数回、我々2人は下北沢の小さな劇場で、芝居の舞台に立っている。
ギャラは観客数に応じた歩合制だが、口コミでそこそこ人気が広がっているため、
生活の足し程度の収入にはなる。
ただし、それはあくまで役者としての報酬。
探偵としての報酬ではない。
探偵とは、職業なのか否か?
答えはまだ、暗いトンネルの中にある。
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by osarudon1 | 2004-07-17 11:05