第70話・事件の背景



「高松家で起こった連続殺人事件は、現在、
 捜査が難航しています。そこで、これまで
 数々の難事件を解決してきたあなたの
 推理をお聞かせ願いたいのですが、その前に
 事件の背景となっている人間関係について
 ご説明しておきます。
 まず第一の被害者である高松権左衛門は、
 自動車部品メーカーのトップ企業・高松製作所の
 会長であり、高松家の家長でもありました。
 会長職とはいえ会社の実権は彼が握っていた
 のですが85歳という高齢のため、後継者選びが
 進行していました。このことが殺人の
 引き金となったことは間違いなさそうです。
 その後継者候補は4人おりまして、まずは
 長男の史郎。現在55歳で、系列会社の
 高松エレクトロニクスの社長を務めている
 人物です。順当にいけば彼が次期会長の
 筆頭候補なわけですが、いかんせん経営手腕は
 権左衛門とは比較にならないほどお粗末で、
 後任としては荷が重いとの評判。彼の妻である
 美佐子は銀座でジュエリーショップを経営して
 おりましたが、不景気のあおりを受けて店は
 潰れる寸前という裏情報もお耳に入れておきます。
 次男の健史は、現在50歳ですが、若いころに
 家を飛び出して、演劇の道を志しました。今は
 小さな劇団を主宰して地方公演などの活動を
 しているようですが、歳をとったせいか父親の
 会社の実権には食指を伸ばしているようですよ。
 三男の昌弘は、47歳。よりによって高松製作所の
 ライバル会社である田野倉電子の専務という肩書き
 を持っています。しかしながら、長男と違ってその
 ビジネスの才にかけてはかなりのものがあり、彼の
 高松製作所入りを熱望する声も多い。
 そして最後の後継者候補は、現在、高松製作所の
 社長を務めている酒井慎太郎。権左衛門が会社を
 興した当初からの片腕的存在ですが、彼も高齢なのが
 ネックになっております。
 さて、次に第二の犠牲者となった、高松家の執事である
 杉島隆文という男についてですが……」

「ちょっと待て。ストップ」

「何でしょう、名探偵Xさん?」

「まだ話は続くのか?」

「もちろんですとも。ここまでの人間関係は
 ご理解いただけましたでしょうか?」

「わかんねえよっ! 長いよっ!」
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by osarudon1 | 2004-07-22 14:02