第87話・最期の超大作

とにかく小説は長ければ長いほどいい。
それをポリシーとするミステリィ作家・張退作。

ライバル・上清水一三六が小説のデジタル化を
全面的に計画中との情報を得て、
彼のハートに火がついた。

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上清水のやつ、どうせ作品のダウンロード販売か、
フロッピーやCD-ROMにテキストデータを入れて
販売するつもりに違いない。

それならば、俺は超大作「大菩薩峠の指環物語殺人事件」を
ハードディスクに入れて売ってやるぞ。

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張退作の新作「大菩薩峠の指環物語殺人事件」は、
なんと1TB(トラックバックではない。テラバイトだ)という
空前の大容量ハードディスク入りで発売された。

これが大方の予想に反して、飛ぶように売れた。

理由は単純である。
9800円という価格が、1TBのハードディスクとしては
異常な安さだったのだ。

もちろん購入した人は、即座に小説を消去して、
PCの外部機器として使っている。

製造コストの大赤字分は、張退作の印税をゼロにしても
とうてい埋められるものではない。

彼の無謀な企画に乗せられた出版元は倒産し、
張退作本人は臓器ブローカーに追われる日々が続いている。
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by osarudon1 | 2004-08-13 18:04