第92話・宴の島の「わたし」~冷えたビールがないなんて~

TBボケチャレンジ枠決定戦お題

「うわーん、だれかたすけてー!」   
と、その時、そこに現れたヒーローとは?
* * * * * * *

惨劇の発端は、誰かが冷蔵庫を開け、
「なんだー? ビールがもう1本も無いじゃねえか!」
と叫んだことだった。
「本当かよ?! 誰だ、幹事は? 段取り悪いぞっ!」
別の誰かが、怒鳴る。

「何言ってるのよ! 100本くらい用意してあったのに」
「こんだけ大勢、酒飲みが集まってるんだ。それっぽっちで
 足りるとでも思ってたのか、このスカポンタンが!」
「(ムカッ)じゃあ、今すぐ酒屋に電話して持ってきてもらうから、
 ちょっと待ってなさいよ」
「酒屋、って、おい、どこの酒屋だよ?」
「本土に決まってるでしょ!」
「あほう! この島まで2時間はかかるだろ! それに、
 この天候じゃあ、船を出してくれないかもしれないだろ!」
「(ムカムカッ)とにかく、注文するだけ、してみるわ」
「どうせ無駄だろうけどな、馬鹿幹事」
数分後。
「届けてくれるってさ。やっぱり2時間かかるそうだけど」
「そんなに待てるかあーっ! なめてんのか、このすっとこどっこいが!」
「(ブチッ)あんた、こっちにも我慢の限界ってものがあるのよ!」
「やる気か、てめえ!」


ここは日本海に浮かぶ「裏羽島」。
所有者不明の別荘が1軒あるのみという、小さな孤島だ。
この夜、裏羽島に集まった30人余りの老若男女は、
とある目的で開催されたパーティーの招待客たち。
しかし、全員が心に疵を持つ〝はぐれ者〟〝日陰者〟ばかりで、
このパーティー自体が、日ごろの鬱憤や、人生に落ちこぼれた
やるせなさを発散させるために開催されたものだったのだ。

負け犬同士、連帯感のようなものが生まれるかといえば、
決してそんなことはない。そもそも、互いが敵同士であり、
これからの人生においても、争うべき間柄なのだから。

そんなわけで、このパーティーは、最初から不穏な空気に満ち溢れていた。
宴が始まるや否や、誰もがものすごいピッチで酒を飲みまくる。
いや、島に到着した時点で既に泥酔状態の者も少なくなかった。
たいして弾まない会話の内容も、どこかしらトゲトゲしく、
ビールの在庫が尽きたことで、招待客たちの導火線に火がついてしまったのだ。

冷蔵庫を開けた男と、幹事の言い争いは、やがて殴り合いに発展。
仲裁に入ろうとした者もいたが、とばっちりで肘鉄を食らい、逆ギレ。
手にしていたビール瓶で幹事の頭を殴打。
すると、噴出した血を見て興奮した若者が、突然手にしたフォークを
振り回し、周りにいた人間たちに無差別攻撃を開始。
ここに至って、パーティーは30人が入り乱れて殺し合う修羅場と化した。

* * * * * * *
島に渡る船の中で、ウォッカを1本空にしていた私は、
この別荘に到着したとたんに、ぶっ倒れてしまい、
宴が始まる前からソファで眠り込んでいた。
だから、目を覚ました時の驚きといったら、説明しようがない。
なにしろ目の前には、大量の死体が転がっていたのだ。
どうやら私以外、全員事切れているようだった。
「うわーん、だれかたすけてー!」

その時、玄関のチャイムが鳴った。
「こんばんわー。山形の酒屋ですけど、ご注文のビールをお届けに参りましたー」

私は、あわててドアを開けた。
「あ、どうもー、酒屋です。ビール3ケース、船に積んであるんですが、
 僕ひとりでは運べないんで、みなさん手伝っていただけますかねぇ?」
「い、いいところへ来てくれました、酒屋さん! お願いします、
 助けてください!」
「はぁ? どういうことでしょう?」
酒屋の男を宴会場へ連れて行き、私は状況を説明した。
まあ、説明といっても私自身、何があったのかわからないのだが。

「あらららら。こりゃまた、大変なことに」
「もう何が何やら……」
「あなたが犯人じゃないとすると、うーん、どうやら、全員でお互いに
 殺し合ったような状況ですよねぇ」
「酒屋さんが来たってことは、電話は通じてるんですよね?
 やっぱりまず警察に電話した方が……」
「いや、港を出る前に注文再確認のための電話をこちらにかけようと
 したんですが、通じなくなっていました。天候のせいか、それとも
 故意に電話線が切られたか。この島は携帯も通じませんからね。
 とにかく警察には本土に戻ってから通報しましょう」
「じゃあ、私も船に乗せていってください!」
「ああ……、それは申し訳ありませんが、無理です。船といっても、
 配達専用の水上バイクみたいなもので、1人乗りなんですよ。
 荷台を使うという手もありますが、この嵐じゃ、危ないです」
「そ、それじゃ私は警察が来るまでずっとこの島に?」
「そういうことになりますねぇ」
「勘弁してください! どこかに殺人鬼が潜んでいる可能性もあるっていうのに!」
「でもねぇ……」
「助けてください!」
「……わかりました。実は、この状況をなんとかする方法がなくもありません」
「そ、その方法とは?」
「信じてもらえないでしょうが、魔法を使うんです」
「は?」
「魔法です。僕、ちょっとくらいなら魔法を使えるんですよ。酒屋になる前は、
 そういう仕事をしておりまして」
「魔法って、あの、ハリー・ポッターのような?」
「あんなに優秀な魔法使いじゃないですけどね、僕は。時間を少しだけ過去に
 戻せるという程度です」
「時間を戻す? タイムスリップみたいなものですか?」
「そんな大層なもんじゃありません。時空移動は極めて高度な魔法ですから。
 私にできるのはせいぜい2~3時間ぐらい、この島の時間を巻き戻すことです」
「あ、ということは、このパーティーが始まる前の時間まで戻せるんですね?」
「そうです。大殺戮が勃発する前の時刻にね。そのくらいしか、お助けできる
 ことはないですね。あとは、なんとか殺し合いにならないように、うまく
 状況をやり直してください。ゲームでいえば、リセットしてセーブしたところ
 から再プレーするような感じです」
「わ、わかりました。そんな事ができるとは信じられませんが、信じます!」
「オッケー。それでは、さっそく呪文を唱えさせていただきます」

酒屋の男が何やらもごもごとつぶやくと、私の視界が急速にぼやけ始めた……。

* * * * * * *
山形の酒屋の男は、本土へと帰る船上にいた。
「昔はほとんど役立たずだった僕の魔法だけど、こんなところで人助けが
 できるなんて思いもしなかったなあ……」
ちょっぴり自己満足に浸りながら、嵐の海上を爆走する酒屋。
注文のビールが船に積まれたままであることは、すっかり忘れていた。

* * * * * * *
そのころ、裏羽島の別荘では……。

島に到着するや否や、ぶっ倒れた泥酔男は、まだずっと
ソファで眠りこけていた。

「なんだー? ビールがもう1本も無いじゃねえか!」
と誰かが冷蔵庫を開けて叫んだ。
「本当かよ?! 誰だ、幹事は? 段取り悪いぞっ!」
別の誰かが、怒鳴る。

「何言ってるのよ! 100本くらい用意してあったのに」
「こんだけ大勢、酒飲みが集まってるんだ。それっぽっちで
 足りるとでも思ってたのか、このスカポンタンが!」

惨劇の幕が上がった。

END.

■□■□■□■□【TBボケチャレンジ枠テンプレ】■□■□■□■□
【ルール】
 お題の記事に対してトラバしてボケて下さい。
 エントリー期限は30トラバつく、もしくは8/22 21:00までとします。

 今回は特別ルールとして審査は投票制になります。
 エントリー期限終了後にエントリー作品一覧記事を企画元ブログにて
 公開しますので、そこに鍵コメントで投票して下さい。
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(あとがき)
激短とは名ばかりの、長すぎる文章。
ほとんどの方が、ラストまで読んでくれないかもしれません。とほほ。
そもそも、このヒーロー、誰だかさっぱりわからないのでは?とほほのほ。
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by osarudon1 | 2004-08-21 09:59