第94話・蕎麦と五輪と愛国心



メダルラッシュに日本中が沸いていた、とある日。
俺は、日本橋の蕎麦屋で天ざるを食っていた。
店内にあるテレビも、当然のごとく五輪中継。
他の客たちは、箸を口に運ぶ手も滞りがちに、
声援をとばしながら、五輪観戦に夢中だ。

メダル獲得に一喜一憂するのも、別に悪くは無い。
悪くは無いのだが、俺はどうしても連中を、
醒めた目で見てしまう。
金メダルがそんなにありがたいものか? とか、
こんな時だけ愛国心に目覚めやがって、などと、
青臭いことを言うつもりも無い。
でも、東京オリンピックに匹敵する日本選手の
活躍ぶりにも、俺はそこまで熱くなれないのだ。

金メダルを15個取ろうが、16個取ろうが、
知ったこっちゃない。
でも、できれば、この天ざるを、もうちょっと落ち着いた
雰囲気の中で味わいたかっただけだ。
食い終わって、俺は店主に蕎麦湯を頼んだ。






金メダル、たったの1個か……。
日本に比べたら、あまりにも情けないよな……。
俺は蕎麦湯をすすりながら、故郷・ジャマイカに
想いを馳せた。
[PR]
by osarudon1 | 2004-08-26 15:47