第95話・Don’t Trust Over 30



 電話。

「私だ。上清水だ。ついにブログ来訪者が30を超えたよ!」
「超えた、って、どれくらいいったんですか?」
「31」
「うわっ、微妙」
「ともかく条件はこれで満たした。いよいよ上清水賞開催だ」
「やっぱりやる気ですか。やめても誰も怒りませんよ」
「何を言うか、入江君。で、賞への応募方式なのだが、
 実はものすごい画期的なプランを思いついたのだ」
「……一応、聞いておきましょう」
「普通にトラックバックしてもらっても面白くないだろう?」
「面白いですよ」
「面白くないだろうが」
「じゃあ、面白くない。はい、それで?」
「時代は今や、デジタルだ」
「また、それかい」
「最後まで聞かんか。実際、私もデジタル化には並々ならぬ情熱を
 持っている」
「知ってます」
「だが、デジタル化には、人間らしい温かみの欠如、という欠点が
 無きにしも非ずだ。そこで私は考えた」
「……一応、聞いておきましょう」
「ズバリ、デジタルとアナログの融合だ」
「大きく出ましたね。で、具体的には?」
「トラックバックされる文字は、当然のごとく活字だ。フォントの違いこそ 
 あっても、基本的には画一化されたデジタルな文字の羅列であることに
 変わりは無い」
「さあ、何を言い出すのでしょうか、この先生は」
「だから、上清水賞は手書き原稿。ワープロ不可」
「どうやって、トラックバックするんですか!」
「手書きの原稿用紙をスキャナーで取り込んで、画像ファイルとして
 送ってもらうのだ」
「……。あの、言わせてもらっていいでしょうか?」
「別に褒めてくれなくていいぞ」
「先生のブログの来訪者、ギリギリやっと30を超えたという程度
 なんですよ? その数字も頭から信用しちゃいけません。ベッカム
 とかオリンピックとかデジタル放送という単語で検索して、うっかり
 来ちゃった人がほとんどかもしれないじゃないですか。先生の読者が
 30人以上もいると思ったら大間違いですよ!」
「ふむ。1人や2人はうっかり者もいるかもしれんな」
「そんな状況で、手書き原稿なんていうトラバ企画を実施して、
 いったい何人の投稿があると思ってるんですか!」
「30人で締め切るつもりだが」
「来ねえよっ! もっと投稿しやすい方式を考えろよっ!……すいません、
 つい語気が荒くなってしまいました」
「まあ、そこまで言うのなら、別の方式も考えてみようではないか。
 おっ、また新たなアイディアが」
「一応、聞いて……いえ、また今度にしてください。もうちょっとじっくり、
 案を練るべきです、あなたは」

手書き原稿スキャン方式は、こうして無事に没案となった。
次に先生はどんな非常識な計画を思いつくのだろうか。
電話が鳴るたび、私の心臓は少しずつ弱っていくのだった。
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by osarudon1 | 2004-08-27 20:19