第102話・グッピーズ伝説(final)



(第98話~101話を未読の方は、そちらからお読みください)

『さよならグッピーズ』

ラストアルバムとなった、グッピーズの5作目。
全10曲の収録曲は、よくいえばバラエティーに富んだ曲調、
しかし実際には散漫な印象が拭えないものになってしまった。
このアルバムに、明確なコンセプトらしきものは見当たらない。
1曲1曲の出来も、比較的地味なものが多く、まるでシングルの
B面コレクションのようなアルバムだ。
また、今までリリース形態にこだわってきたのが嘘のように、
このアルバムだけは普通に店頭に並んだ。

さまざまな点で首を傾げたくなるようなアルバムであり、
タイトルも『さよならグッピーズ』だったことから、
多くのリスナーがバンドを終焉を予感していた。
結局、グッピーズはその予感通りに解散することになったのだが。

解散は、グッピーズ公式HP上で、アルバム発売の1か月後に
メンバーのSONNYによって発表された。
以下、その全文をここに再録する。

* * * * * * *

グッピーズを愛してくださったファンの皆様へ

こんにちは。SONNYです。
今日は皆様に、ご報告とお詫びをしなければなりません。

先日発売されました『さよならグッピーズ』を最後の作品として、
バンドは解散いたします。

解散の理由は、たった一つです。
グッピーズが発表できる楽曲は、すべて出し切ってしまい、
もう次の作品を送り出すことができないということです。

グッピーズはこれまでに、5枚のアルバム・50曲をリリース
いたしました。その50曲が、グッピーズとして皆様に
お聴かせできるすべてのナンバーということになります。

私たちには、今後、新曲を録音して発表することができません。

その理由をご説明させていただきます。

実は私、ボーカル担当ではありません。
皆様を欺こうとしていたわけではないのですが、
私はリズムギターをなんとか弾ける、という程度の音楽家で、
歌なんてこれっぽっちも歌えないのです。

それでは今までグッピーズの曲を歌っていたのは誰なのか?
と思われるでしょうが、バンドの本当のボーカリストは、
私の実弟である〝KATTSU〟という男です。
50曲のグッピーズナンバーをすべて作詞・作曲していたのも
KATTSUでした。
皆様の前に登場していたグッピーズとは、全員がKATTSUの
歌をサポートするバックバンドだったのです。

残念ながら、KATTSUはもう既にこの世にはおりません。
グッピーズのファーストアルバムが発売される1年ほど前に、
骨肉腫が原因で他界しております。

子供のころから音楽好きだったKATTSUは、生前に
オリジナルの曲を多数作っており、ギターの弾き語りによる
50曲のナンバーがデモテープとして録音されました。
いつかはバンドを組んでデビューしたい、という夢を
抱いていたようでしたが、病気のこともあって、それは
実現しないままに彼岸へと旅立ってしまいました。

兄である私は、なんとか彼の作品を世に出したいと、
友人であるCAHRLIE、RYU、MOTOの3人に
声をかけ、グッピーズというバンドをでっちあげたのです。

ここまで申し上げれば説明は不要かと思いますが、
グッピーズの5枚のアルバムで発表された50曲は、
すべてKATTSUのデモテープに、あとから4人の
演奏をかぶせたものです。
ジョン・レノンのデモにダビングを施した、再結成
ビートルズの『フリー・アス・ア・バード』や、
自殺したHIDEの『ハリー・ゴー・ラウンド』などの
手法にヒントを得たものですが、50曲すべてが、
故人のデモをベースにレコーディングされたものだとは、
事情を知っていた一部レコード会社のスタッフ以外には、
全く気付かれなかったようです。

最初から私たちは、50曲を5枚のアルバムに振り分けて
発表することを決めていました。
楽曲のタイプによって4枚まではうまく分散できたのですが、
残る10曲は、どうしても収まりが悪く、バラバラの印象を
与えてしまうものでした。5枚目の『さよならグッピーズ』が
あのような散漫なアルバムになったのは、そういう事情です。

3枚目のコンセプトアルバム『絶海の孤島にて』では、
私がノベルス版の小説を書きました。
ストーリーが先にあって、ロックオペラ化したのではなく、
ストーリー的な繋がりを持たせられそうな10曲をもとに、
あとから〝原作〟を作り上げたのです。

1回限りのテレビ出演も、演奏曲がインストだったからこそ、
実現した話です。なにしろ本当のボーカリストが不在なので。

1枚目から4枚目まで、さまざまなリリース形態を取ったことに
関しては、2つの大きな理由があります。
1つは、単純に話題作りです。ライブ活動ができない、という
制約があったグッピーズにとって、インパクトのある話題を
提供することは、唯一といっていい宣伝手段だったのです。
もう1つは、KATTSUの作品を、本当に愛してくださる
人たちに聴いてもらいたかったということ。ファン同士の
交流にも一役買ったようで、ただ消費されるだけの音楽を
流通させることとは、違った結果が生み出せたと思います。

そんなわけで、KATTSUが残した50曲は、これですべて、
皆様にお届けすることができました。
バンド結成の目的は果たされたため、別のボーカリストを加えて
再出発するとか、インストバンドとして活動するというような
選択肢はありません。グッピーズは解散いたします。

本当にありがとうございました。

いつまでもグッピーズの、いえ、KATTSUの歌声と、
言葉とメロディーが、みなさまの心の片隅に、
ちょこんと座っていられますように。

            グッピーズ・SONNY

* * * * * * *



こうして、グッピーズは伝説となった。
物語はここで幕を閉じるが、この原稿を執筆している最中に、
SONNYから1本の電話があった。
それによると、弟の遺品の中から、未発表のデモテープが
数曲発見されたとのこと。
録音状態が極めて悪いため、正規のリリースは困難なようだが、
「なんらかの形でファンの皆様にお届けしたい」
と、SONNYは言っていた。

グッピーズの〝新曲〟を耳にする日も近いかもしれない。
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by osarudon1 | 2004-09-03 15:16