第217話・大衆文学の危機~直木賞受賞作なしの真相~

第217話は「暴れる濁流(超人軍団第5号)」を
お届けする予定でしたが、急遽、予定を変更して、
直木賞に関する緊急対談を掲載させていただきます。


「入江くん、平成18年下期の直木賞は、受賞作なし、
 という結果だったようだね」

「まあ、これまでにも何度かありましたけどね。どうせ
 上清水先生はノミネートすらされていないんだから、
 別に関係ないじゃないですか」

「そうも言ってられないのだよ。今回はそれなりに、
 話題作もノミネートされていた。にも関わらず、
 結果は受賞作が出なかった。これは、大衆文学の
 世界にとって、由々しき問題だろう」

「出版界の盛り上がり、という点では、確かに受賞作が
 ないとパッとしませんけど」

「実は、私は非常に心苦しい思いをしているのだよ。
 今回、受賞作がなかったのは、どう考えてみても
 私のせいなのだ」

「どう考えても先生は無関係でしょう」

「まあ、最後まで聞きたまえ」

「一応、聞いておきましょう」

「直木賞といえば、エンターテインメント文学の世界では、
 ある意味、最高峰に位置する賞だ。受賞作家は、その
 金看板を一生背負っていくことができる」

「そうですね」

「直木賞作家、という肩書き、誰もが、その肩書きに
 憧れるのはやむをえないだろう」

「上清水賞作家、という肩書きよりは憧れますね」

「そこだ、そこ」

「なんですか」

「直木賞は、二度受賞することはできない。だから、
 今回受賞してしまったら、もう二度とチャンスは
 ないわけだよ」

「あたりまえでしょう。1回獲れば肩書きが手に入るから、
 二度獲りたいなんていう人はいませんよ」

「普通はな」

「今回は普通じゃないって言うんですか?」

「言うんだよ」

「わけわかりません」

「もし、今回受賞した作家がいたとすれば、間違いなく
 こう後悔するだろう。『こんな時に受賞しなければよかった』と」

「なぜ今回は駄目なんですか?」

「決まっているだろう。今回だけは、受賞しても世間からは
 直木賞作家と呼ばれないのだよ。いや、正確に言えば、
 肩書きは確かに直木賞作家だし、直木賞の歴史には
 その名前が刻まれるのだが、世間の人々の記憶には、
 別の形で残ってしまうのだ」

「別の形とは?」

「直木賞じゃなくて、上清水賞作家だよ」

「どこをどうすればそういう論理になるんです?」

「今回の直木賞、第何回か知ってるかね?」

「えーと、確か、第136回です。……あっ」

「直木賞は正しくは直木三十五賞というのだが、
 なまじ名前が和数字という共通点があるだけに、
 第136回という数字も相まって、世間の記憶には
 上清水一三六賞と間違って刻まれてしまうのだ」

「もう返す言葉がありません」

「あっ、しまった! ってことは、第35回上清水賞を
 受賞する作家は、直木賞作家と間違えられるって
 ことじゃないか! ううむ、問題だ」

「問題なのは、あんたの思考回路だ!」

入江くんの必殺技『だいもんじ』が命中し、
上清水は丸焼けになった。

~THE END~

* 次回から超人軍団シリーズ再開です。
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by osarudon1 | 2007-02-21 12:49